現地視察レポート ベトナム (2008年3月)

JASS ベトナムの「子どもの家」を支える会

2007年版カレンダーにて少年が描いた絵を掲載させて頂いた、ベトナムのJASS「子どもの家」を訪問しました。
JASS 子どもの家
▲JASS「子どもの家」
1993年当初、写真前方の1階部分(3部屋)のみだったが、
その後、日本からの各種援助により増築し、今日に至る。
JASS「子どもの家」は、1993年、ベトナム中部のフエ大学で日本語教師をしていた小山道夫さん(元東京の小学校教諭、現JASS代表)がストリートチルドレン10人ほどを集めて、保護したのが始まりです。
現在は、ベトナム政府や日本の各種団体からの協力もあり、計61人(小学生12人、中学生15人、高校生9人、専門学校生と大学生4人、その他、職業訓練センター21人)が生活をする、総合的な「自立支援施設」として、ベトナムに大きな貢献をなさっています。

ここ数年、各国ボランティア団体の尽力やベトナム経済の発展(ドイモイ政策)によりストリートチルドレンは減りました。いまや、このフエにおいてもストリートチルドレンを見かけることはほぼなくなってきました。



▲グエン・ヴァン・ハイくん
実際にお会いしたハイくんは、どちらかと言えば、 もの静かで多くを語らない少年でした。 しかし、その穏やかな瞳の奥に、人に対する 深い優しさのようなものを感じます。

しかしながら、ドイモイ政策(ベトナム社会主義における市場経済の導入)によって、ベトナムの所得格差は非情なまでに広がり、国民の約8割を占める農村部では、いまだ生活が苦しい家庭も少なくありません。

この格差については、同じ基準で比較すると日本では3倍のものが、ベトナム社会ではなんと24倍にもなります(小山さん談)。また、ベトナムでは小学校、中学校に通うにも学費を払わなければなりません。

そのため、最近では、田舎の家庭において、子供たちの生活費や学費をまかなうことができず、「子どもの家」で生活をする子供たちも増えています。2007年版カレンダー5月の絵「家族の愛情」の作者、グエン・ヴァン・ハイくん(右の写真)も、その中の一人です。 両親が亡くなり、しばらく叔父と暮していましたが、その後、「子どもの家」で生活を始めました。


▲美術のための部屋


JASS代表の小山さんは「子どもの家を運営し始めた当時、そこで生活する子供たちの心がすさんでいたため、暴力事件も少なくなかった」とおっしゃられています。そのため、心の教育の重要性にも着目し、施設を増築してゆく際に「美術のための部屋」や音楽を楽しむことができる「催しもの部屋」を加えてゆきました。

今回の滞在中、ここで暮らしながら、フエ芸術大学の附属高校に入学した青年にも出会うこともできました。現在、ベトナム最大の都市ホーチミンでは、ベトナム人画家のアートギャラリーも少なくありません。JASS「子どもの家」の存在は、子どもたちにチャンスと希望を与えるという意味でも、ベトナムにおいて大きな役割を果たしていることを感じます。





▲子供たちが描いた絵
 

 


▲食事風景
みんなで作り、小学生から高校生までがそろって食べる。こうした場で学ぶことは 少なくないかもしれない。

今回の訪問で強く感じたのは、子供たちが皆とても良い目をしていていて、年齢差を超えて人を思いやる気持ちを持っているということでした。

いっしょに食事をした際も、一介の訪問者であり、初めて食事の仲間に入れてもらった私のお皿に常に気を配り、誰が言うまでもなく、自発的にご飯やおかずをよそってくれます。私は10歳にも満たない子どもたちが、そうした気配りをできることに感動しました。様々な年齢や境遇の人が集まる「子どもの家」の集団生活を通し、人として大切なことを学んでいっているのかもしれません。


▲子供たちの生活部屋。 真剣な眼差し。宿題の最中?


▲“ガオ”という子供たちの間で人気の遊び道具。足を使い、羽根突きのようにして遊ぶ。

   
   

▲JASSが運営する縫製の職業訓練センターで学び、現在は手に職をつけ、生計を立てることができる。

さらにJASS「子どもの家を支える会」では、日本語学校、バイクの修理工や裁縫技術などの職業訓練センター、日本家庭料理店なども運営し、ここで育ってゆく子供や青年たちの財政的自立を支援しています。

JASSのかたからお聞きした「一過性の措置に終わらず、いかにベトナム人自身の手によって、財政的自立を果たすかが重要」という言葉が忘れられません。同時に(詳しく書くことはできませんが)、現地で支援にあたっておられる人々の様々な障壁や苦難も、並大抵のものではないことを知りました。


   

▲JASSが運営する日本語学校にて1年間の日本語勉強の成果を試すスピーチコンテスト。古都フエは観光都市であり、日本からの訪問者は年々増えている。観光ガイドを目指すベトナム人も多い。

日本の皆様からの善意(寄付金)をどう活用するかという点で、今回、海外における支援活動の成功例を見た気がします。

ストリートチルドレン芸術祭では、引き続き、皆様のご支援を有効に活かすべく、現地への支援を続けて参りたいと思います。

最後にこの度の訪問を快く受けて下さり、お世話になりましたJASSの小山道夫様と税田眞理子様には、この場を借りて、あらためまして、御礼申し上げます。

 

   
   
(文責:栗山)